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2025-07-03 23:31:00

16) 柳生心眼流の免許体系8   ぶっ飛ばせよいということではない。

どんな時でも相手をぶっ飛ばすのが最良でしょうか。ぶっ飛ばすことに酔っている方が最良なのでしょうか。あまりそのようには思えません。

ぶっ飛ばして相手が頭を打って頭蓋内出血になって死んだらあなたは留置所に入るかも。首を絞めれば落ちるといって、閉めたら首にあった血栓がとんでその場で脳梗塞とか。当身で血管迷走神経反射を起こした場合、その方が心臓に問題を持っていると不整脈を起こして突然死することもあり得ます。腹部に大動脈瘤を持っている方に蹴込んだら等々。私にはとても怖くてできません。門人の方にもそういう思いはさせたくないです。柳生心眼流の戦前の話は、あまりここでは書けないような本当に悲惨な話がたくさんありました。

門人が怪我すれば一家の働き手が仕事を失うという事態になりますし、相手に取り返しのつかない障害を与えてしまったということも聞いたことがあります。そのことが双方の人生を変えてしまうことがあるのです。

このため星国雄宗家は防具や道具を工夫していかに安全に稽古するかをいつも考えていらっしゃいました。本当に使ってしまいそうな人の前では危ない技の話は絶対にしませんでした。大人が本気になったら大変なことになる。「やわらとは取らせず取らず気を収め」とあります。しないが一番です。

あるときは相手に説明し、あるときは自分が引き、逃げ、負け、よいと思えば相手を称賛する。こういうのは日々研鑽です。身をいつも慎んでいることはとても大切です。そこに道があります。先生は「彼も人、我も人」とおっしゃっていました。誰もが安全でありますようにと思って暮らす。

もしそういう手を相手が使ってきたらどうしましょう。自動車が正面から向かってきたらどうしましょう。これは絶対にかわさなければならないです。これが柳生心眼流です。柳生宗矩のいう「負けぬ術を存じ居る」です。いざというときにそういう「かわし」ができる。思わずして生きる方向に動いていける。そういう方が一人でも多く育ってくださることを願っています。