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2025-09-24 01:05:00

26) 柳生心眼流の免許体系18  流儀には流儀の伝書の書き方、伝え方がある

武道をなさらない方に「柳生心眼流ってなにがあるのですか」と聞かれて、「うーん、いろいろあります」と答えるしかない感じです。柔術もあり、武器術もあり、剣だけでも大刀、中刀、小刀、鎧通などかなりたくさんあります。立合も居合もあります。棒も三尺棒、六尺棒など。甲冑着た技もあるし、素肌の技もある。これは彦十郎先生の書かれた「相伝目録」にある通りです。ほかに槍とか薙刀とか、十手、手ノ内など・・稽古道具作るのが大変です。結構書物に書かれているもの以外もあります。これは他流もそうだといわれたことがあります。ただ、私は他流の事はあまりわからないので証明もできないのですが・・・

柳生心眼流の伝書というのは、昔から項目だけ書いて、内容は詳しく書かないのが一般的です。背景には「伝書はいつか外に出て人に読まれるもの」という基本的な了解があるため、必ずしも本当のことを書いていないことがあります。わざと抜いてあったり、順番を変えたり、字を変えたり、左右を逆にしたり。本当の事は口伝で伝えるという伝統があります。古武道ですのでかなり秘密主義です。こういうことがあるため、柳生心眼流の伝書を研究するときはそのままで受け取ってはいけないのです。どういうふうに伝書から情報を読み取っていくのかが大切です。このため甲冑免許くらいからはいろいろな伝書を見ながら先生が解説してくださいます。うちの流儀にはうちの流儀の伝書の書き方や伝え方があるからです。それを受けない方がいろいろと単に文字づらだけを見て考えると、いろいろと変なことになります。

伝授では口伝が大切です。これがないと読めないです、それどころか巻物に添う口伝というのもあって、これは当然もらった人しか伝えられません。こういうことは稽古しているうちにだんだんに伝えられていくものです。よく先生の話を聞いている人は伝書をみれば、ああ、これのことかとわかります。だから稽古に参加して先生の話をよく聞くことが大切なのです。仏教でも聞思修といいますが、武道もその通りで、まずよく聞き習い、自分なりにいろいろな角度から検討しつつまた聞いて、稽古を重ねていきます。同じことを聞いてさえ正しく理解する人、間違って理解する人はいます。これは世間一般と同じです。その人が正しく理解できているかも指導する側は確かめなければいけません。正しく理解できているかは問題を出して答えていただければわかります。これも世間一般と同じです。わかったような顔をしていても、口に出して、あるいは動いていただければ理解度はわかります。こういうことも禅の問答と似ているところがあります。このようにして心が育つといいます。すこしずつ育っていくのを確かめながら口伝していきます。本当の理解は一朝一夕では難しいです。星国雄宗家は「待つのはつらい」とおっしゃっていました。でも彦十郎先生には「なんでもちゃんちゃんと教えるものではない」とおこられたことがあったそうです。わかっていただこうとすれば、師匠が何度も説明を繰り返します。弟子が何度も質問を繰り返します。私も先生にはいろいろと質問しましたし、先生も異なる機会に何回も説明してくださいました。そうして、なるべく間違いのない理解、正解に近づくように努めて慎重に伝えていくのです。