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2026-02-04 00:11:00

45) 柳生心眼流の免許体系37  自分に当てはめる

初めて基本二十一箇条を教わってから、その後もずっと聞くということを大切していくことが必要です。わかったと思ってもその次の世界があるし、間違って理解していないか絶えず自分を点検していかないといけません。しかし、それだけでは不十分です。流祖は自分ではなく、先師様方も自分ではありません。実際の自分の人生に当てはめていく必要があります。世の中の例でたとえてみたいと思います。

一般に学校の勉強は知識を優先するので、用意されている「解答」を答えればいいというものが多いです。いかに効率よく知識や技術を習得していくかということが優先されます。私たちの頃の受験戦争はまさにそうでした。医学部の解剖学では、これでもかという膨大な量の臓器の部分や場所の名称をラテン語と日本語で暗記しました。医師国家試験を通るために覚えた病気の名前や治療法も膨大でしたがが、今はもっと膨大らしいです。

しかし実社会に出るととたんに壁にぶちあたります。知識だけで済まないことはすぐにわかます。人対人の世界。ここでもまずは先輩方の方法を学び、自分でもできるようにしていきます。しばらくするとそれで出来上がったように思ったりもしますが、実はその先があります。ここまでは仕事を覚えた段階。まだまだです。

最近は情報化社会でAIも発達してきたのでアッという間に必要な情報が集められたりしますが、それはインターネット上にある情報のみであって、それ以外のところにある情報は参照できませんからおのずと限界があります。わからないことを調べて調べてやっとわかる。考えて考えて意外なところから解決策が出てくることもあります。技術の世界は最先端はその方の頭と体の中にあったりすることも多いです。

日本高血圧学会の2025年版の高血圧管理ガイドラインでは、なんと1599の文献を引用し、それだけでなく元になったデータを引出して統合し、幾重にもメタ解析とよばれる精度の高い方法で再解析してエビデンスを構築しています。統計学ではいろいろな方法で検討して同じような結果がでれば真理なんだろうという見方をします。いろいろな方向から切って、断面がすべて円だったらもともとの物体は球形だったと推論するようなものと言われています。そのために、あっちからもこっちからもいろいろな方向や方法でぶった切って検討します。

解決策のないこともあるわけです。根本的に治すことのできない病気はたくさんあります。そうしたらどうするか。今治せなくても将来治せるように世界中で研究がなされています。一生ささげても解決できないかもしれないです。でも研究者たちは挑戦を繰り返しています。

何十年も向上しなかったり後戻りした治療法がある発見をきっかけに飛躍的な向上したりします。発見する人も重要ですが、それを一般に広めていく人も大切です。こういうところの方法やアプローチは人それぞれ。正解は1つではないです。

情報を集め、考え、自分を磨く。ここにくると同じ分野で仕事をしていてもかなり個別化していきます。自分なりのやり方、方法が出てきます。まさに積み重ねです。世の中の状況を知ったうえで自分なりの信念や見解をもって仕事にあたるようになります。

武道も同じところがあると思います。小具足をもらっても皆伝をもらっても、あるいは先生からいろいろと口伝を伝えられても、それをそのまま「言葉だけ同じに伝える」だけではまだまだなのです。もちろんここをおろそかにしてはいいけないのですが、これならある程度おぼえればできます。

そこからさらに稽古を続けていくと、心技を磨きたいのはやまやまながら諸般の事情で中断もし、いろいろな失敗もし、実社会で生きていくという経験を交えて武道を考察していくようになります。星先生もいろいろな苦労をされ、そこで考えたこともよくお話しくださいました。晩年もいろいろな本をお読みでしたし、他流の古い武道伝書も参照されていました。昔の武道家もいろいろなところで大変な苦労をし、それでも生きて何かをつかみ取ってそれを伝えてくれました。自分もいろいろな経験を積みながら勉強させていただきながら、いろいろなことに気づかされることになります。武道を続けるということは自分が生きていくことにおいてどういう意味があるのか、これからの自分にとってどういう意味があるのか、家族を守り子供や門人の方々を育てるとはどういうことか、体や心を健康に保つとは等々。あっちからもこっちからも検討し考えて、何度も思い、気づいていきます。やがて自ら納得して自分の言葉で「こうなんだ」ということを発し始めます先生のお言葉として聞いていた自分が、いつのまにか同じようなことを思い、言い出すのです。